薬ではわからない、でも処方せんでわかる ~骨ベーチェット病編~
骨ベーチェット病は原因不明の骨の病気です。珍しい病気で、患者数は国内に数百人程度と言われています。
骨ベーチェット病は珍しい病気ですが、使用されている薬は珍しいものは多くありません。
むしろ、薬剤師として仕事をしていると、普段よく目にする薬が使われています。それは他のメジャーな病気に使われる薬だからです。
だけど、処方せんを見ると「あっ、この人は骨ベーチェット病なのかな」と感じることができるのです。それはどうしてでしょう。
今回は、骨ベーチェット病についてまとめるとともに、その謎について紹介したいと思います。
骨ベーチェット病とは
骨ベーチェット病では破骨細胞と骨芽細胞の両方が過度に活性化し、骨の分解と再構築が著しく亢進しています。
このように骨の代謝が著しく亢進することで骨変形や骨肥厚が起こり、疼痛や骨折といった症状が出現します。
さらに骨肉腫という骨のがんにまで進行する場合もあり、早期発見・早期治療が重要です。
骨ベーチェット病の治療
・痛みなどの症状に対する対症療法
・ビスホスホネート系製剤
・エルシトニン
痛みを伴う場合、NSAIDsなどの鎮痛剤が使用されます。また、骨のゆがみがひどい場合などは矯正器具を用いて痛みを軽減させたり、あるいは手術などを行うこともあります。
ビスホスホネート系製剤のうち、骨ベーチェット病に適応のある薬を使用します。これらは破骨細胞の活性を抑制し、骨ベーチェット病の進行を遅らせると言われています。
ヒスホスホネート系製剤が服用できない場合などにはデノスマブの注射が代替薬として使用させることもあります。
ときにカルシトニン製剤を皮下注射や筋肉注射で投与することがありますが、ビスホスホネート系製剤ほどの効果は期待できず、他の薬が使用できない場合に使われることが多いです。
また、合併症として高カルシウム血症を認める場合はフロセミドや輸液などを用いて、高カルシウム血症の治療を行うこともあります。
骨ベーチェット病の治療薬は骨粗鬆症の治療にも用いられるものが多くを占めます。例としてビスホスホネート系製剤の一つであるベネット®錠17.5mgをあげてみましょう。
さいごに
骨粗鬆症と注意点などは同じですが、用法用量は実に異なります。ほとんど場合、骨粗鬆症に対して使用される薬ですので、多くの説明書に1週間に1回でよいとの記載があったりしますが、骨ベーチェット病に対しては連日投与です。
このように、どの疾患に用いるかによって用法用量の異なる薬は多々あります。
例えば、知り合いの方が自分と同じ薬を飲んでいるからといって、全く同じ病気とは限らないのです。
反対に、同じ用法用量でも対象としている疾患が異なる場合もありますが今回は詳細については割愛します。
薬剤師は処方せんを見て疾患を予想することがあります。処方せんには薬の名前はもちろん、用法用量や投与日数、さらには併用薬についても書かれています。そういった情報を総合的に判断し、予想しているのです。今回紹介したベネット®錠17.5㎎は用法用量から疾患を予想しやすい薬です。
しかし、処方せんの内容だけでは確信を持てないことも多々あります。
だからこそ、薬局では「今日はどうされましたか?」なんて聞かれるのです。
「病院でもう話したんだし、薬局は薬をくれればいいんだよ」と思われる方もいらっしゃるでしょう。しかし、どんな病気に対して使用しているかがわからなければ、薬が正しく処方されているか確信を持つに至らないのです。
今回、例にあげたベネット®錠17.5㎎ですが、医師が骨粗鬆症と同じ用法用量でよいと思い込んで処方した場合どうなるでしょう。薬剤師が患者さんとの会話の中から骨ベーチェット病だと知ることができなかったら、医師へ問い合わせることなく骨粗鬆症の用法用量のまま調剤されかねません。
「なんでもう一度」と思っても、病院で話をしたこと、聞いたこと、これを教えてくれると薬剤師としてはありがたいのです。この記事を読んだみなさんには、ぜひとも協力いただければと思っています。よろしくお願いします。