ビスホスホネート

薬は一般的に食後に飲みましょうというものが多いのですが、実は起床時に服用しなければならない薬があります。その代表例は骨粗鬆症などの治療に用いられるビスホスホネート系と分類される薬です。

<ビスホスホネート系製剤の代表例>
・アレンドロン酸ナトリウム水和物(フォサマック、ボナロン)
・リセドロン酸ナトリウム水和物(アクトネル、ベネット)
・エチドロン酸二ナトリウム水和物(ダイドロネル) 
・ミノドロン酸水和物(ボノテオ。リカルボン)
・イバンドロン酸ナトリウム水和物(ボンビバ)

これらの薬剤(飲み薬)は基本的には起床時に服用することと決められています。また、起床時に服用した後、30分は水以外のものを飲み食いしないこと、横にならないこと(寝転ばないこと)と指導されます。

ではどのような理由からこのように決められているのでしょうか。

★起床時に飲まなければならない理由★

起床時に飲まなければならない理由は、食事の影響を受けやすいからです。食べ物が胃の中にある状態でこの薬を服用すると、著明に吸収が低下します。食事からかなりの時間がたっていてもほとんど薬として吸収されないこともあります。

そのため、起床時の何も食べていない状態(もちろんジュースなどの飲み物も飲んでいない状態)で服用しなければなりません。そして、服用後30分は水以外の飲み物や食べ物を摂取してはいけません。カルシウムやマグネシウム等の含有量が高いミネラルウォーターも注意が必要です。

★横になってはいけない理由★

横になってはいけない理由は、食道などの消化管に対して刺激が強い薬だからです。横になることで、薬が食道に滞留したり、一度胃まで到達した薬が食道へ逆流したりすることで、食道炎や食道潰瘍を生じる恐れがあります。

そのため、服用後30分は横にならないようにと定められています。

このビスホスホネート系に分類される薬は飲み方が特殊です。特殊な飲み方の薬にはそれぞれ何かしらの理由があるものです。そうはいっても、起床時だと飲み忘れてしまう方もいるでしょう。ビスホスホネート系製剤が発売された当初は毎日服用する薬しかなかったのが今では週に1回、月に1回、さらには年に1回(注射薬)の薬まで出てきています。年に1回だと逆に忘れてしまいそうですが、薬を服用する手間が少しでも省けることに今後も期待していきたいと思います。

カルシウムを摂ればいいってもんじゃない

骨粗鬆症にはカルシウム!という認識。正しいのですが、時には控えた方がよい場面もあります。その一つは骨粗鬆症の薬を飲んでいる場合です。


骨粗鬆症の治療薬には様々なものがあります。ここではそれぞれの作用機序などについて詳細は省略しますが、以下のように分類されます。

●カルシウム製剤
  アスパラCA® など
●活性型ビタミンD3製剤
  アルファカルシドール(アルファロール®、ワンアルファ®)
  エルデカルシトール(エディロール®)         など
●女性ホルモン薬
  エストラジオール (ジュリナ®)           など
●ビタミンK2
  メナテトレノン(グラケー®)
●ビスホスホネート薬
  アレンドロン酸ナトリウム水和物(ボナロン®、フォサマック®)
  リセドロン酸ナトリウム水和物(ベネット®)      など
●選択的エストロゲン受容体モジュレーター(SERM)
   ラロキシフェン塩酸塩(エビスタ®)         など
●カルシトニン製剤
  エルカトニン(エルシトニン®)            など
副甲状腺ホルモン薬
  テリパラチド(フォルテオ®)             など
モノクローナル抗体製剤
  デノスマブ(プラリア®) など
●その他

基本的にはこのうち、カルシウム製剤もしくは活性型ビタミンD3製剤、副甲状腺ホルモン薬を使用中の場合はサプリメント等で過剰にカルシウムを摂取することは避けるべきです。高カルシウム血症や高カルシウム尿症を呈する危険があるからです。

逆に低カルシウム血症になりやすく、カルシウム製剤などを併用しなければならないものもあります。

骨粗鬆症にはカルシウム!間違いではありませんが、薬を服用している際には注意が必要な場合もあります。健康食品やサプリメントであっても服用する時には医師や薬剤師に相談するようにしましょう。

はじめてのお薬

生まれたばかりの新生児はビタミンKが欠乏状態になりやすいと言われています。ビタミンKは胎盤移行性が悪く、出生時に体内に備蓄される量が少ないことが多いのです。加えて、母乳中に含まれるビタミンKも少なく、また、腸管吸収が悪いこと、新生児ではビタミンKを産生する腸内細菌が育っていないことなどが大きな理由です。

ビタミンKは肝臓での血液凝固因子の合成に関与し、止血作用を発現します。ビタミンKが欠乏すると出血をきたしたりや出血しやすい状態に陥りやすくなります。ビタミンK欠乏性出血症(Vitamin K deficiency bleeding : VKDB)とも言われます。

VKDBを予防する目的で日本では合併症などを持たない新生児に対してケイツー®シロップと呼ばれるビタミンK製剤を服用させます。

[ケイツー®シロップ]

一般名:メナテトレノン

効能・効果:新生児出血症及び新生児低プロトロンビン血症の治療
      新生児・乳児ビタミンK欠乏性出血症の予防

用法用量:ビタミンK欠乏性出血症の予防に対して

通常、出生後、哺乳が確立したことを確かめてから、1回1mL(メナテトレノンとして2mg)を経口投与する。その後、2回目として生後1週間または産科退院時のいずれか早い時期、3回目として生後1ヶ月時にそれぞれ1回1mLを経口投与する。

代表的なスケジュール

1回目 ⇒ 出生後哺乳を確認した後
2回目 ⇒ 退院時もしくは生後1週間
3回目 ⇒ 1ヶ月検診時

この方法でもVKDBの報告があることから次のような投与方法もあります。

●出生後3ヶ月まで週に1回 ケイツーシロップを1回1mLずつ投与

服用方法

・基本的には1回1包(1mL)を白湯で約10倍に薄めて飲ませます。
・スティック包装の薬ですが、直接投与せず、哺乳瓶やスプーンなどに移して投与してください。誤嚥の可能性や唇が傷つく可能性があります。
・スポイドを使用して服用させる時は、頬裏と歯茎の間に薬を流し込むと吐き出しにくくなります。

副作用:めだつ副作用はほとんど報告されていません

3ヶ月間、1週間毎の服用を指示された場合は退院後もお薬を飲ませてあげなければなりません。この薬は看護師や助産師の力を借りずに赤ちゃんに自分で飲ませるはじめての飲み薬となることも多いでしょう。副作用はほとんどない薬ですから、安心して落ち着いて飲ませてあげてください。

妊娠中のワクチン接種

●インフルエンザワクチン

日本のインフルエンザワクチンの添付文書には妊婦への投与は予防接種上の有益性が危険性を上回る場合のみ接種することとされています。同時に、小規模ながら、接種により先天異常の発生率は自然発生率より高くはならないという報告があるとも記載されています。アメリカなどでは妊婦にはインフルエンザの予防接種が推奨されています。

①妊婦はインフルエンザに罹患すると重症化しやすい
②妊婦がワクチンを接種することで生後6ヶ月頃までの児のインフルエンザ罹患率を下げる報告がある
③胎児への影響は自然発生的なリスクと変わらない
④副反応は非妊娠時と変わらない

インフルエンザワクチンは免疫抑制剤(シクロスポリンなど)の長期投与を受けている人には効果が得られにくいとの報告もあり、免疫抑制剤を使用中の妊婦については接種の前にしっかりと検討する必要があるでしょう。

このようなことを鑑みた上で、最後は自身で投与するかどうかを決定する必要があります。

●麻しんワクチン、風しんワクチン、水痘ワクチン

妊娠中はこれらの生ワクチンは接種できません。しかし、日本は今でも麻しんや風しんが時折流行します。妊婦自身は予防接種を受けることができないため、夫など家族にこれらのワクチン接種を受けてもらいましょう。

B型肝炎ワクチン

妊婦の感染リスクが高い場合は妊娠中の接種が推奨されています。

●コロナワクチン

コロナワクチンについてはやっと医療従事者の先行優先接種が始まった段階です。一般の方が受ける頃にはもう少しデータも揃ってくるのかもしれませんが、現段階では妊婦のコロナワクチンの接種についてはよくわかりません。

生ワクチンではありませんから、受けてはいけないというものではありません。妊婦への投与でどういった影響が出るのかについては現時点では定かではありません。これは妊婦に限らずですが、コロナワクチンを受けるかどうかについては個人の判断に委ねられるというのが現状です。

コロナワクチンを打って何かあったらどうしようという不安が大きい方は受けずに出産後まで様子をみるという選択も間違いではないと思います。また、妊娠中にコロナにかかったらどうしよう(ワクチンを打ったからといって100%予防できるわけではないですが)という不安が大きい方は受けるという選択をしても、それも間違いではないでしょう。

アスピリンってピリン系?

アスピリンはピリン系ですか?」「ピリン系でアレルギーがあるのにアスピリンを飲んでもいいのですか?」

こういった問い合わせを受けることがあります。

答えとしては、アスピリンはピリン系ではありません。

名前が似ているので、勘違いをされる方もいますし、医療従事者でさえ混同している場合もあります。が、違います。

ピリン系はピリン環(ピラゾロン)という化学構造を持つ解熱鎮痛剤の総称です。アレルギーが起きやすい薬として有名です。解熱鎮痛作用が強いですが、抗炎症作用は期待できません。

●ピリン系薬剤(医療用医薬品)
・SG配合顆粒®(イソプロピルアンチピリン配合)
・スルピリン®(スルピリン水和物)
・クリアミン®配合錠A 、S(イソプロピルアンチピリン配合)

実はピリン系薬剤は近年では使われる機会が減ってきており、あえてピリン系を病院から処方されるということは少なくなっています。しかし、市販薬にもピリン系薬剤があります。風邪薬などを購入する際には薬剤師に確認するようにしましょう。市販薬のピリン系というとイソプロピルアンチピリンが該当します。「IPA配合」などと書かれていることもあります。

●ピリン系薬剤(市販薬)

※代表例
・セデス®・ハイ
プレコール®
・ルルアタック®FXa  など

一般薬はピリン系と表示されていることが多いですが、必ずしも目立つように書かれているものではありません。また、同じような名前で全く異なる成分の市販薬も少なくありません。薬でアレルギーがある方は購入前に必ず薬剤師に相談しましょう。また、市販薬を服用した後にアレルギー症状が出た場合は薬のシートだけでなく、外箱を持って病院を受診するようにしましょう。

また、余談になりますが、ピリン系でアレルギーがあるという方の中には本当は違うのにピリン系だと思い込んでいる例もあります。例えば、本当はアスピリンでアレルギーなのに、自身がピリン系でアレルギーだと思っているためにアスピリンが躊躇いなく処方され、再びアレルギーを発症するという可能性もあります。アレルギーが出た薬については必ず薬剤名や成分名をきちんと把握しておくようにしましょう。

先発品のような後発品

ジェネリックという言葉を聞いたことがある人は多いのではないでしょうか。どこかの製薬会社のCMでもこの言葉が流れていましたね。

ジェネリック医薬品というのは、つまりは後発医薬品と言われるもので、先発医薬品の特許期間が終了した後に、先発医薬品と有効成分や規格等が同じであるとして臨床試験等を省略して発売される医薬品をいいます。後発医薬品は一般的名称(generic name)を医薬品名とすることから、ジェネリック医薬品と呼ばれています。

 さて、それでは後発医薬品は先発医薬品と全く同じ医薬品であると言えるのでしょうか。実際には否です。薬というのは、有効成分だけを固めて作られるものではなく、様々な添加物が含まれています。添加物というと悪いイメージをもつ方もおられるかもしれませんが、この添加物によって、錠剤の形を保つことができたり、苦い薬を飲みやすくしていたり、すぐに分解されてしまうような薬の安定性を高めたりしているわけです。後発医薬品は有効成分については先発医薬品と同じですが、製造工程や添加物には違いがあります。ただし、必ずしも先発医薬品の添加物や製造工程が良く、後発医薬品のそれらが悪いとは言い切れません。このように、少しばかりの違いはあるものの、有効成分は同じで、生物学的同等性(服用後の血液中の薬物濃度推移が同等)を認められたものが後発医薬品と呼ばれるものになります。

 

では次に、オーソライズジェネリック(authorized generic:AG)というものをご存知でしょうか。直訳すると公認されたジェネリックという意味になります。実は後発医薬品メーカーが先発メーカーから特許の使用許諾を受けて製造される医薬品のことを言います。有効成分だけでなく、添加物、製法まですべて先発医薬品と同一である後発医薬品です。そのため、生物学的同等性を確認する試験すら免除され、承認されます。薬としては全く同じもの、といっても過言ではありません。

 医療費削減に向けて、ジェネリック医薬品の使用が推進されるようになって久しいですが、超高齢化社会を迎える日本にとってはジェネリック医薬品のさらなる使用促進が望まれます。しかし、後発医薬品が先発医薬品と同等とはいえ、同一ではなかったためにジェネリック医薬品への変更を躊躇されるケースがあったのも確かです。薬以外のものであれば、「安くて同じもの」、「古いものより新しいもの」を求めるものではないでしょうか。しかし、薬にはこの一般論は当てはまらなかったようですね。個人的な意見でいうと、後発医薬品はAGに限らず、メーカーを選べば安心して使えるものだと思っています。どのメーカーがよいかはさておきですが。AGが増えることで、さらにジェネリック医薬品が世の中に浸透することを願います。

Clostridioides(Clostridium) difficile感染症(CDI)の治療

Clostridioides (Clostridium) difficile とは・・・
  (クロストリディオイデス(クロストリジウム) ディフィシル)

・芽胞を形成する偏性嫌気性グラム陽性桿菌
・腸内の常在菌のひとつ
・多くの抗菌薬に耐性
・トキシン産生株と非産生株がある

Clostridioides difficile感染症(CDI)とは

抗菌薬の使用で腸内細菌叢が壊されて、優位となったC. difficileが産生するトキシンによって引き起こされる感染症

CDIの症状

下痢、発熱、腹痛が主な症状です。
また、麻痺性イレウス、偽膜性腸炎、さらには腸管穿孔を引き起こすことがあります。
さらには血管の中に菌が入り込み敗血症などを引き起こす可能性もあり、死に至るケースもあります。


CDIの治療
① 原因となった抗菌薬の中止
② 薬物治療
 キードラッグ
  ・メトロニダゾール(フラジール®、アネメトロ®)
  ・バンコマイシン
  ・フィダキソマイシン(ダフクリア®)
  ・ベズロトクスマブ(ジーンプラバ®)(再発抑制目的)
  
処方例
・メトロニダゾール内服 1回500mg(250mg2錠) 1日3回 (1,500mg/日) 10日間
バンコマイシン散内服 1回125mg 1日4回 (500mg/日) 10日間
バンコマイシン散内服 1回500mg 1日4回 + 
   メトロニダゾール点滴(アネメトロ®) 500mg 8時間おきを併用
・フィダキソマイシン内服 1回200mg  1日2回 (400mg/日) 10日間


このCDIという感染症は場合によっては死に至るリスクが大いにあります。CDIは多くの場合は医療機関に入院している期間に起こることが多いものです。しかし、入院中以外で起きないというものではありません。この感染症の主な原因の一つに抗菌薬の不適正使用があげられます。抗菌薬の適正使用がいかに重要であるかは、昔から多くの医療者や研究者によって唱えられていますが、今でも抗菌薬の処方が全て適正であるとは言い切れません。もちろん、抗菌薬の不適正使用は医療者側の要因もあります。しかし、患者側にもあることを忘れないようにしましょう。薬はないのですか、なんでもいいから薬がほしいです、といったことを医師に訴えたりしていませんか?もう元気になったからといって出された薬を飲みきらずに残したことはありませんか?そういった積み重ねが重大な病気を引き起こす可能性があることをぜひ覚えておいてほしいです。

最後に、もちろんCDIの原因の全てが抗菌薬の不適正使用というわけではありません。

参考:Clostridioides ( Clostridium ) difficile感染症診療ガイドライン