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サリドマイドの効能 ~現役薬剤師のひとりごと~

サリドマイドは胎児に重大な障害を引き起こすことが知られています。妊娠中の女性がサリドマイドを服用すると、胎児の成長が妨げられ、手や足の短い被害児や耳の聞こえない被害児がうまれることがあります。
その他、胎児の内臓の発達が妨げられ、生後1年以内に亡くなったり、死産や流産になることも知られています。特に妊娠初期は胎児のからだの各器官がつくられる時期です。

どの器官の発達が妨げられるかは、サリドマイドを服用した時期によって異なります。

このサリドマイドの催奇形性の副作用による薬害事件、いわゆるサリドマイド事件が世界規模で起こり、サリドマイドはいったん市場から姿を消すことになりました。

しかしその後、1998年にアメリカでハンセン病の治療薬として承認されました。日本でも、2008年、多発性骨髄腫の治療薬サレド®カプセルとして承認されています。

今回は、このサリドマイドについてまとめてみたいと思います。



                   参考:サレドカプセルの添付文書

サリドマイドの作用機序

・骨髄腫細胞や骨髄腫細胞の増殖や生存を助けているストローマ細胞に直接作用し、増殖抑制、細胞死を誘導する
・骨髄腫細胞とストローマ細胞の結合を抑制する
・骨髄腫細胞の増殖・生存に必要なサイトカインの分泌を抑える
・血管新生を阻害する
・免疫調整作用

サリドマイドの副作用

・催奇形性
・末梢神経障害
・好中球減少
・血小板減少
・深部静脈血栓
・眠気
          など

サレド®カプセルの効能効果

・再発又は難治性の多発性骨髄腫
・らい性結節性紅斑
・クロウ・深瀬(POEMS)症候群

サレド®カプセルの用法用量(多発性骨髄腫に用いる場合)

1日1回100mg就寝前 (状態により適宜増減するが1日400mgを超えない)

TERMS(タームス)(thalidomide education and risk management system)

サリドマイドの教育と安全使用に関する管理システム

サリドマイドの催奇形性の副作用は忘れてはならないものです。当然、使わずにすむのであれば、それにこしたことはありません。しかし、治療の選択肢が限られていた多発性骨髄腫などに効果が認められており、サリドマイドを必要とする方がおられるのも確かです。

二度とサリドマイド事件のような薬害事件を起こすことなく、うまくサリドマイドを使っていかなければなりません。このTERMSは、催奇形性についての知識習得、妊娠回避の徹底、保管管理の徹底を医療者および患者本人や家族が遵守することを目的としたサリドマイドの安全管理手順です。

このシステムによってサリドマイド製剤は管理され、服用中の患者には定期的に妊娠回避を実施しているか、薬剤の紛失や他人への譲渡などを行っていないかなどを確認しています。過去に大きな事件を起こした薬剤であり、一度は市場から姿を消した薬剤ですが、現在は厳密な管理の下、必要な人に適正に使用されています。
 

しかし、どのような薬にもリスクはつきものです。特に他人に処方された薬や過去に処方された薬を自己判断で服用することは極めて危険です。家族や友人に良かれと思って薬を譲渡することがないようにしましょう。


sakimitiharu.hatenablog.com
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