妊婦の風邪

風邪というのはウイルス性の感染症です。ウイルスと細菌は全くの別物ですから、細菌に対して働く抗生物質や抗生剤、抗菌剤という薬は風邪には効きません。一般的に風邪の治療は薬に頼るのではなく、自身の免疫でもって治るのを待つということが原則になります。とはいえ、熱が出て、咳や鼻水がつらいということがあるでしょうから、症状を緩和する目的で解熱剤や咳止め、抗アレルギー薬などが処方されることがあります。「総合の風邪薬」という言葉を聞いたことがある人がいるかもしれませんが、この「総合の風邪薬」には抗生物質などは入っておらず、症状を緩和する目的の薬が複数配合されているものをいいます。

 妊婦が風邪をひいた場合も同じです。自身の力でもって、風邪を治すのを待つというのが基本になります。治療の基本は安静、保温、水分補給です。実は風邪をひいた時の体温の上昇はウイルスの活動性を低下させ、かつ生体の免疫反応を高めるということが知られており、むやみやたらに解熱剤で下げるべきではないという考えもあります。対症療法とはいえ、薬物療法は最小限におさえ、自然に回復するのをまつという選択が最善かもしれません。

 しかし、実際には妊婦に限らず、薬を求めて病院を受診する方がかなりの数いらっしゃいます。風邪であれば薬は必要ないというのが本当のところですが、患者さんの希望に負けて薬を出すという医師は多いと思います。この時、まったく効果のない抗生物質は出せませんから対症療法に用いられるような薬が処方されるのでしょう。

 

【代表的な風邪薬】

●PL配合顆粒

  アセトアミノフェン、サリチルアミド、プロメタジンメチレンジサリチル酸塩、無水カフェインが配合されているいわゆる総合の風邪薬

 

●葛根湯

  風邪の初期症状に効果的と言われる漢方薬
  葛根の他に生姜などが配合されており、血行を改善し、発汗を促す作用がある
  胎児への影響は証明されていないが、昔から使われる比較的安全な薬である

PL配合顆粒の服用によって自然奇形発生率を上回る異常の報告はありません。しかし、成分の一つであるサリチルアミドに類似しているアスピリンでは胎児に出血傾向があらわれ、また死産や難産の増加が報告されています。また、PL配合顆粒の1回服用量に含まれるカフェインはおおよそインスタントコーヒー1杯分です。1日量が多い、もしくは服用期間が長くなるとカフェインの過剰摂取による胎児への影響は出てくるかもしれません。妊娠中にPL配合顆粒を数回飲んだからといって、大きな問題はありません。しかし、この薬の投与が不可欠という状況以外では投与しないほうがいいでしょう。この薬の代わりに何か処方するとすれば、例えば解熱剤としてアセトアミノフェンの単剤へ変更、もしくは上記の葛根湯に変更、あるいは1週間程度の服用であれば問題ないとされている抗アレルギー剤へ変更などが選択肢としてあがるでしょう。