頑張るパパママの薬のみかた

現役薬剤師は頑張るパパママのつよーい味方

【薬剤師向け】レンバチニブの適応拡大

2021年3月23日、レンバチニブ(レンビマ®)について、切除不能な胸腺癌へ適応拡大が承認されたことが発表されました。切除不能な胸腺癌を対象に治療薬が承認されたのは世界で初めてです。

レンバチニブは胸腺癌以外に、甲状腺癌、肝細胞癌に対して使用される薬ですが、それぞれ使用量が異なります。

【レンバチニブの作用機序】

 
がん細胞は細胞増殖を行うために、自身に栄養を取り込むツールとして血管を新たに作り出すことが知られています。血管新生と言われます。この血管新生に関わる因子として血管内皮増殖因子(VEGF)や線維芽細胞増殖因子(FGF)などが知られており、これらの因子がVEGF受容体(VEGFR)やFGF受容体(FGFR)に結合することで新たな血管が作られるのです。レンバチニブはVEGFRやFGFRを阻害し、血管新生を阻害します。結果として、がん細胞に栄養が行き届かなくなるのです。


また、また、そのほかに線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体(FGFR)といわれるチロシンキナーゼも存在します。これは細胞の増殖を促したり、血管を新たに作ったりする因子として知られています。あるいは組織の修復や細胞増殖に関わる因子として血小板由来増殖因子受容体(PDGFR)なども知られています。レンバチニブはこのようなチロシンキナーゼの働きをおさえることで、がん細胞の増殖を抑制する作用があります。


このようにレンバチニブは多数のチロシンキナーゼの作用を阻害する薬であるため、マルチキナーゼ阻害剤と言われることもあります。

【レンビマ®について】

●効能効果

切除不能甲状腺
切除不能肝細胞癌
切除不能な胸腺癌





●用法用量

甲状腺癌、胸腺癌   1日1回24mg
肝細胞癌       体重60kg以上の場合 1日1回12mg
           体重60kg未満の場合 1日1回8mg





●代表的な副作用

高血圧
下痢
食欲不振
体重減少
悪心
疲労、倦怠感
口内炎
蛋白尿








現時点では使用できる癌種の限られた薬ではありますが、今後さらに適応拡大が見込まれる薬です。進行子宮体がんにも効果が期待されています。治療選択肢が比較的少なかった疾病にこのような薬が使用できることで救われる命があると信じたいと思います。

同じ薬ですが、異なる疾患に使用する場合には使い方が異なることは大いにあることです。適応が増えれば増えるほど、使用する側も誤った使い方をしないよう注意が必要だと肝に銘じたいと思います。