2歳までにほぼ全員が感染する⁉ 知らないと怖いRSウイルス感染症
RS(Respiratory Syncytial)ウイルス感染症は、RSウイルスというウイルスによって引き起こされる感染症です。
生後1歳までに約半数、2歳までにはほぼ全員がRSウイルスの初感染を受けると言われています。
生後数週間から数ヶ月の時期に感染すると、気管支炎や肺炎を起こし、重症化する例も散見されます。重症化して入院治療が必要になった場合でも多くの場合は適切な治療により軽快します。しかし、気管支の末端(細気管支)に炎症を起こす細気管支炎を発症した場合には、将来、気管支喘息になるリスクが上がるという報告もあります。
多くの子どもが感染するもので、小さなお子さんを持つお母さんお父さんにとっても無視できない感染症の一つです。
実際に感染症を発症したときに早めに対応できるようRSウイルス感染症について知識として知っておいて損はないでしょう。
今回はこのRSウイルス感染症について紹介します。
潜伏期間と初期症状
潜伏期は約2~8日間で、発症後数日は発熱、鼻汁、鼻づまりなどの上気道炎症状が続きます。その後、下気道症状があらわれることがあります。
RSウイルス感染症の治療
残念ながら特効薬と呼べるものはありません。
重症化し入院治療が必要な場合、酸素投与と点滴治療が行われることがあります。
酸素投与はその名の通り、体内の酸素を補うために行われます。
RSウイルス感染症では呼吸器に症状が出るため、呼吸困難になることがしばしばあります。特に呼吸機能が未熟な乳幼児は体が必要とする量の酸素を取り込むことができず、容易に酸素不足に陥ります。酸素の投与、さらには人工呼吸器の装着が必要となる場合もあります。
点滴治療は、食事量(哺乳量)の減少による栄養不良や高熱などによる脱水症状を改善することを目的に行われます。特に乳幼児の脱水は命に関わる状態ですから、点滴による水分補給は重要です。
RSウイルス感染症の予防
感染予防の基本は手洗い・うがいなどです。
さらにRSウイルス感染の予防に関する薬としてシナジス®(パリビズマブ)という注射があります。この注射により、感染自体を防ぐことはできませんが、重症化を防ぐことができるとされています。
RSウイルスに感染するリスクが高く、特定の条件に当てはまる場合に投与が検討されます。
参考:シナジス®の添付文書
シナジス®の適応となる児
○在胎期間28週以下の早産で、12ヶ月齢以下の新生児および乳児
○在胎期間29~35週の早産で、6ヶ月齢以下の新生児および乳児
○過去6ヶ月以内に気管支肺異形成症の治療を受けた24ヶ月齢以下の新生児、乳児および幼児
○24ヶ月齢以下の血行動態に異常のある先天性心疾患の新生児、乳児および幼児
○24ヶ月齢以下の免疫不全を伴う新生児、乳児および幼児
○24ヶ月齢以下のダウン症候群の新生児、乳児および幼児
シナジス®の投与量
体重1kgあたり15mgを月に1回筋肉内に投与する
(RSウイルス流行期を通して摂取を継続)
※注射量が1mLを超える場合は分割して投与
例えば体重が10kgの子どもの場合、150mgの投与が必要になるが、薬液量(注射量)としては1.5mLとなる。その場合、例えば1mLと0.5mLに分けて別々の部位に投与する。