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【薬剤師向け】多発性骨髄腫

多発性骨髄腫とは

多発性骨髄腫(MM:Multiple Myeloma)は、血液がんのひとつで、血液細胞の一つである形質細胞のがんです。形質細胞は骨髄でつくられる血液細胞のうち白血球の一種であるBリンパ球から分化してできる細胞です。形質細胞には体内に侵入した細菌やウイルスなどの異物から体を守る抗体をつくる働きがあります。この形質細胞ががん化し、骨髄腫細胞となり、多発性骨髄腫を発症します。骨髄腫細胞は骨髄の中で増殖し、異物を攻撃する能力のない役に立たない抗体をつくり続けます。この役に立たない抗体(Mタンパク)や骨髄腫細胞が様々な症状を引き起こすと言われています。

多発性骨髄腫の症状

多発性骨髄腫では増殖した骨髄腫細胞によって正常な血液細胞をつくる過程が妨害され、貧血や白血球減少、血小板減少などを引き起こします。また、正常な形質細胞が減ってしまうことで免疫機能の低下を引き起こします。さらに増え続けるMタンパクによって、腎障害や血液循環障害(過粘稠度症候群)が起こりやすくなります。また、骨髄腫細胞によって刺激された破骨細胞が骨を破壊してしまい、骨折や骨痛、脊髄圧迫による麻痺、高カルシウム血症が起こることもあります。

多発性骨髄腫の治療

以前は治療が極めて困難な病気の一つでしたが、造血幹細胞移植が普及し、また、新しい薬剤が次々と開発されるようになったことで、治療成績は向上してきています。現時点では多発性骨髄腫は治癒を期待することは難しく、治療は延命を目的としています。しかし、治療介入により長期の生存が可能となっている疾患でもあります。

【移植ができる方の場合(65歳未満、重篤な合併症がない場合)】

自家移植を考慮し、移植前に骨髄腫細胞を減らすことを目的に薬物治療を行います(導入療法)。導入療法には様々な選択肢があり、全身状態や合併症、予後などを考慮して選択されます。

<代表的な治療の流れ>

BD療法(ボルテゾミブ、デキサメタゾン)を3~4コース
         ↓
G-CSF単剤(顆粒球コロニー刺激因子)
または
シクロホスファミド大量療法+G-CSF
         ↓
末梢血から造血幹細胞を採取
         ↓
自家造血幹細胞移植
   ※寛解導入療法後は早期に自家造血幹細胞移植を行う
   ※移植の前処置としてメルファラン大量療法を施行
         ↓
(維持療法 : サリドマイドやレナリドミドなど)

【移植を行わない方の場合(66歳以上、臓器障害などで移植適応外の場合)】

移植を前提としない場合、多剤併用の化学療法が選択されます。化学療法には様々な選択肢があり、年齢や合併症、末梢神経障害や血栓症などのリスクを考慮して選択します。ボルテゾミブやレナリドミドなどの薬剤を中心とした多剤併用療法が選択されることが多いです。

[治療レジメン(例)]

・D-MPB療法(ダラツムマブ、メルファランプレドニゾロン、ボルテゾミブ)
・D-Ld療法(ダラツムマブ、レナリドミド、少量デキサメタゾン

【再発・難治性骨髄腫の場合】

初回治療終了から6ヶ月以上経過したあとの再発・再燃の場合、初回導入療法がもう一度効く場合もあり、同じ治療を選択することもできます。また、初回治療で用いられなかった薬を含む治療に変更する場合もあります。自家造血幹細胞移植から2年以上経過して再発した場合は再度の自家移植も考慮できます。

初回治療終了から6ヶ月未満の再発・再燃や治療中に進行したような難治性骨髄腫の場合はボルテゾミブやサリドマイド、レナリドミド、カルフィルゾミブなどを含む治療が優先されます。






多発性骨髄腫に対しては新しい薬が次々と登場しており、治療成績が上がってきています。今でも難治性の疾患ではありますが、医療の進歩によって救われる命が増えることに期待したいです。



sakimitiharu.hatenablog.com
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