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医療現場では当たり前の【簡易懸濁法】って知ってますか⁉

簡易懸濁という言葉を聞いたことはあるでしょうか。

病院などの医療機関や、介護施設では「簡易懸濁」という言葉は当たり前に使われるようになってきましたが、世間一般に知られているかというと現状はそうではないかもしれません。

今回は、簡易懸濁が当たり前になってきた経緯から紹介したいと思います。

簡易懸濁が行われるようになるより前の医療現場の実態

医療機関ではご飯を口から食べることができない人に、胃ろうや経鼻チューブなどを用いて栄養を投与しています。

今でも、この医療技術は栄養療法において必須であるといえます。口からご飯を食べることができないわけですから、当然、口から薬を飲むこともできません

こういった場合、薬もチューブから投与されるわけです。

従来、薬は粉薬もしくは錠剤を粉砕したものを水に溶かしてチューブから流し入れるという方法を使用していました。


しかし、この錠剤を粉砕して使用する方法には様々な問題点が含まれています。代表的な問題点は以下のようなものです。

① 錠剤を粉砕した場合の薬の質や効果の変化
② 錠剤を粉砕する際に医療者や介護者、家族が薬に暴露する
③ チューブの閉塞
④ 手間
⑤ 粉砕時の薬のロス

簡易懸濁法はこのような問題点を軽減することができ、普及が進んだと言えます。

★簡易懸濁法とは★

錠剤を粉砕したり、カプセルを脱カプセル(開封)したりせずに、錠剤・カプセル剤をそのままお湯に溶かし、懸濁させて経管投与(チューブから投与)する方法

★具体的な方法(代表例)★

① カップやボトルに服用したい錠剤と温湯(約55℃*)を入れる
② 5~10分放置する(必要な時間は薬の種類により異なる)
③ ②を懸濁させる
④ ③を注射器などで吸い上げてチューブから投与する

*55℃の温湯の簡単な作り方

ポットのお湯と水道水をおおよそ2:1で混ぜる

(もちろん季節や地域によりやや配分は異なりますが、おおよそお湯2に対して水1を入れたちょっと熱めのお湯というイメージで問題ありません)

厳密に55℃である必要はありません。

温度が低すぎれば薬がとけにくく、高すぎれば薬を変質させる恐れがあります。

★簡易懸濁のメリット★

・チューブを閉塞させるリスクが低い
・投与する薬の量が減らない(粉砕するとどうしてもロスがでる)
・投与直前まで錠剤のままのため、安定性が担保できる
・調剤や服薬時の手間が減る

★デメリットや注意点★

・全ての薬が簡易懸濁できるわけではない
・チューブを閉塞させてしまう薬もある
・薬の種類によって55℃が適温でない場合がある
  例えば55℃の温度では効果を失ってしまう薬など
・錠剤のままではなく、最初に軽くつぶしてから簡易懸濁をすべき薬もある

★まとめ★

簡易懸濁法とは簡単にいうと、薬を粉砕することなく錠剤のままお湯に溶かし(懸濁し)、その懸濁液を投与する方法です。


薬は粉砕後の安定性などが担保されていないものも多く、本来ならば錠剤は安易に粉砕すべきではありません。

ただ、実際に錠剤のままでは服用できない場合もあり、そういった場合にこの簡易懸濁法が応用されればと期待しています。

また、簡易懸濁で溶かす錠剤が先日の記事に示した「OD錠」であれば、さらに理想的ではないかと思います。OD錠の普及にも期待したいと思います。

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