吐き気止めで高血糖
オランザピンは統合失調症やうつ病の薬として有名ですが、近年では吐き気止めとしての効果を期待して使用されることが増えています。
しかし、糖尿病のある方には使用できない薬です。
今回は、このオランザピンについてまとめてみます。
オランザピンについて
●効能・効果
○統合失調症
○双極性障害における躁症状およびうつ症状の改善
○抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)
※強い悪心、嘔吐が生じる抗悪性腫瘍剤の投与の場合に限る
●用法・用量
○統合失調症
1日1回5~10mgより開始
維持量は1日1回10mg(適宜増減)
最大1日量は20mg
○双極性障害における躁症状の改善
1日1回10mgより開始(適宜増減)
最大1日量は20mg
○双極性障害におけるうつ症状の改善
1日1回5mg(就寝前)より開始し、その後10mgへ増量(適宜増減)
最大1日量は20mg
○抗悪性腫瘍剤投与に伴う消化器症状
1日5mg(適宜増減)
最大1日10mg
<オランザピンによる高血糖の発現>
●発現機序
発現機序は不明
仮説① オランザピンそのものによりインスリン抵抗性が生じる
仮説② プロラクチン値の上昇がインスリン抵抗性をもたらす
仮説③ セロトニン5-HT1A受容体拮抗作用により膵臓からのインスリン分泌の減少
仮説④ オランザピンが膵臓β細胞のアポトーシスを引き起こす
仮説⑤ オランザピンが糖輸送担体に作用して糖輸送を傷害する
などなど・・・
オランザピンによる治療中に高血糖が起こるメカニズムは解明されていないのが現状です。
●高血糖症状出現時の対処法
高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿など)が認められた場合には、血糖測定およびその他の検査を実施し、糖尿病の有無を判断する。
・糖尿病と診断、糖尿病の既往歴がある場合⇒ オランザピンを中止、糖尿病専門医へコンサルト
・糖尿病と診断されない場合、糖尿病の既往歴がない場合 ⇒ オランザピンを中止する必要はないが、血糖値や臨床症状をよく観察し、慎重に投与を継続する
糖尿病の治療は血糖値、電解質、HbA1c、トリグリセリド値、コレステロール値などの検査結果に基づいて行う。
抗がん剤なのによる吐き気に対して使用される頻度が増えたことにより、様々な方が服用される機会が増えた薬です。オランザピンにより、今まで嘔気・嘔吐に苦しんでいた方が少しでも減ることはとても良いことです。しかし、薬には必ず副作用という面があります。今回は、オランザピンの高血糖という副作用をあげましたが、実は血糖値が上がることがあるという以外、どうしてそうなるのか等はきちんと解明されていません。このような場合に大切なことは、そのような副作用が出現した場合に、早期に対応を取ることです。高血糖症状(口渇、多飲、多尿、頻尿など)が認められた場合はすぐにかかりつけ医に連絡しましょう。