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フェジン®をブドウ糖液で希釈する理由

 鉄分の補給は経口が原則ですが、経口鉄剤が投与できない場合に注射剤が用いられることがあります。そこで登場するのが、注射薬の鉄剤であるフェジン®静注です。

フェジン®の添付文書を確認すると・・・

 

【適用上の注意_希釈時】

pH等の変化により配合変化が起こりやすいので,他の薬剤との配合に際しては注意すること。なお,本剤を希釈する必要がある場合には,通常,用時10~20%のブドウ糖注射液で5~10倍にすること。

 

とあります。

 

ではなぜブドウ糖で希釈する必要があるのでしょうか。

それを考える前にフェジン®の開発の経緯を簡単に。注射用鉄剤は体内で鉄がイオン化することによる急性中毒反応により、長きにわたり臨床応用は困難とされていました。しかし、コロイド性鉄剤である含糖酸化鉄が開発され、日本では1961年より発売が開始されています。

つまり、急性中毒反応を回避するには、この薬の特徴であるコロイド状態を保つことが必須であると言えます。そのためには1020%のブドウ糖液で希釈する必要があるのでしょう。

 

しかし、実際には5%のブドウ糖液で希釈され投与されることが多いようです。

それは、浸透圧が関係しているのでしょう。通常、抹消血管から投与できる輸液の浸透圧は血液の2~3倍までといわれています。浸透圧が1であればそれにこしたことはありません。浸透圧の高いものを投与すると血管炎などを起こしえます。血液の浸透圧は5%ブドウ糖液と同等といわれていますから、1020%のブドウ糖液にフェジン注を混ぜた場合の浸透圧は少々お高めと言えます。ですから、5%ブドウ糖液で希釈されることが多いのでしょう。経験的にはそれでも血管痛を訴える方が多い薬だと感じています。

 

注射剤で鉄分を補給できる有用な薬ですから、血管炎といった副作用と鉄イオンによる急性中毒反応といった副作用の両面を鑑みてうまく使用していきたいものです。