たかが肺炎、されど肺炎 高齢者は要注意! 成人用肺炎球菌ワクチンのすすめ
肺炎はよく名のしれた疾患の一つですが、高齢者にとっては命に係わる疾患です。この肺炎を予防することを目的とたワクチンがあります。
成人用肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®)は肺炎球菌が原因となって起こる高齢者の肺炎などの発病や重症化を防ぐためのものです。
ただし、予防接種を受けることですべての肺炎を予防できるというわけではありません。
肺炎球菌とは?
肺炎球菌は莢膜(ポリサッカライド)という分厚い膜に覆われています。そのため、ヒトの免疫で撃退することが難しい細菌だと言われています。
さらに抗菌剤の効かない耐性菌も報告されています。肺炎球菌による感染症は治りにくく、重症化しやすい感染症の一つです。
肺炎球菌の感染経路
肺炎球菌はのどの奥や鼻に存在する常在菌で、咳やくしゃみなどにより飛沫感染します。
肺炎の原因菌
市中肺炎の主な原因菌は肺炎球菌だと言われています。
そのほか、インフルエンザ菌、黄色ブドウ球菌、肺炎桿菌なども多種の最近が肺炎を引き起こすことがあります。
なぜ予防が必要なのか
肺炎で亡くなる方のほとんどが65歳以上です。若年者(成人)が肺炎を起こしても回復することが多いのですが、免疫の低下した高齢者ではたかがとは言えない疾患が肺炎です。
また、肺炎球菌は肺炎を引き起こす以外に、菌血症や髄膜炎などを起こしうるとも言われています。
そのため、高齢者は肺炎球菌による感染症を予防することが重要になります。
年齢以外のリスク因子
・喫煙歴
・喘息やCOPDなどの呼吸器疾患
・糖尿病
肺炎の予防
肺炎とは言え、感染症ですから日々の感染予防が何より大切です。
手洗い、うがい、マスクなどの感染予防を実施しましょう。さらに歯磨きをおろそかにせず、口の中を常に清潔に保つということも肺炎を予防する上では重要です。
肺炎を引き起こすきっかけに誤嚥があります。
誤って気管に食べ物や飲み物、唾液などが入ってしまうことを誤嚥といいます。
この誤嚥の際に、口の中の細菌などが一緒に気管に入ってしまうことで、肺炎を引き起こすことがあります。誤嚥の予防も肺炎の予防につながります。また、自己の免疫力を高めるために規則正しい生活を送ることも重要です。
高齢者が肺炎を予防する方法の一つとして、「成人用肺炎球菌ワクチン」の接種が推奨されています。2021年現在、65歳以上の対象年齢の方は肺炎球菌ワクチンを定期接種で受けることができます。この定期接種は現時点では5年に一度、定期接種のチャンスが与えられているように感じる制度ですが、計画では今後は定期接種の機会は65歳の1回限りになる予定です。定期接種の対象となる年は限られていますので、機会を逃さないようにしましょう。
もちろん、定期接種ではなく任意接種で受けることもできます。
成人用肺炎球菌ワクチン(ニューモバックス®NP)
ニューモバックス®NPは23価の肺炎球菌ワクチンです。
このワクチンによる免疫は5年以上続くと考えられていますが、その後、免疫は弱まってくると言われています。前回の接種から5年以上たった場合は再接種が推奨されます。ただし、再接種は定期接種の対象にはなりません。
5年以内に再接種をおこなった場合、注射部位の疼痛や赤い発疹、しこりなどの副反応が強く出現することがあります。過去にワクチン接種を行ったことがある場合は、接種年月日を忘れないようにしましょう。
肺炎球菌ワクチンに限ったことではありませんが、接種後はアナフィラキシー(全身のかゆみ、じんましん、のどのかゆみ、呼吸困難、ふらつきなど)が起こることがあります。
多くの場合、投与後30分以内に出現しますので、この間は医師とすぐに連絡のとれるようにしておきましょう。
23価の肺炎球菌ワクチンのほかに、13価の肺炎球菌ワクチンも存在します。こちらは定期接種の対象とはなりません。もともと、乳幼児に適応をもつワクチンですが、65歳以上でも接種が可能となっています。接種時期については医師とよく相談しましょう。
23価ワクチンを打ったあとであれば、1年以上あけて13価ワクチンを接種します。その後、さらに1年以上あけてかつ23価ワクチン接種から5年以上あけて23価ワクチンを再接種するとよいでしょう。
13価ワクチンに引き続いて23価ワクチンを投与することで、長期の免疫が獲得できるのではないかと言われています。13価ワクチンを過去に接種した方でも、対象年齢になった場合は23価ワクチンの定期接種を受けることができます。
さいごに
肺炎球菌ワクチンによる予防は高齢者を肺炎から守る一つの手段ですが、接種したからもう安心だと思うことなく、日ごろから感染予防を心掛けることが何より大切です。ワクチン接種を受けたからといって感染予防を怠らないようにしましょう。